黄昏バラッド


私だって初めは本気じゃなかった。

相手は先生だし、きっと長く続けられるわけがない。

でもふたりしか知らない秘密ができて、学校で見る先生の姿が少し違く見えた。

こんなこと友達に言えるわけないし、先生からも誰にも言うなって言われてた。


友達の恋の話には笑顔で乗って、自分の話になると嘘を重ねた。

罪悪感はあったけど、きっと私は今まで体験したことのない日常に溺れていたのかもしれない。


先生とは映画に行ったり、ドライブに行ったり、遊園地にも行った。

学校では見せない笑顔や行動に、私は気づくと先生に本気で恋をしていた。

私の知らない世界をたくさん見せてくれて、大人の人が行くようなお店にも連れて行ってくれた。


先生と付き合いはじめて1か月が過ぎた頃、私は先生と身体を重ねた。

それはドライブの途中の海が見える海岸。

初めては車の中だったけど後悔はしていない。


『北原好きだよ』

そんな甘い囁きを言われるたびに、私もどんどん好きになった。


『卒業したら結婚しよう。俺は本気だから』

時々そんな夢みたいなことも言ってくれた。


今思えば笑って流せる話もその時は私も本気で先生と結婚したいと思ってた。

そのぐらい遅すぎた初恋は私の感覚をどんどん変えていったんだ。

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