黄昏バラッド
ドライヤーの熱風が私の髪に当たってる。誰かに髪を乾かしてもらったのはこれがはじめて。
「ノラの髪ってサラサラだね。傷んでないから乾くのも早いし」
体育座りしている私の後ろでサクは膝をついていた。乾かすたびにサクの指が私の頭に触れて、それが少しくすぐったい。
体育座りしながら前を見るとサクのギターが壁に立て掛けられていた。
いつかまたあの歌が聞きたい。
あの歌はだれの歌なんだろう?
「はい。終わったよ」
ドライヤーの熱風がやむと私の髪の毛は手ぐしの必要がないほどサラサラとしていた。なぜかドライヤーを片付けようとするサクに思わず声がでた。
「乾かさないの?……髪」
「いいよ。俺は自然乾燥で」
それならなんでわざわざドライヤーを出したの?私の髪を乾かすため?
「……貸して。乾かしてあげる」
借りを作るのは好きじゃない。だって世の中ギブアンドテイクでしょ?してもらったらする。
そうしていればあとがラクだから。