黄昏バラッド
「……喋ったら罰ゲームだって言ったでしょ?」
理不尽なことを言ってるって分かってる。
だけどこれ以上サクに優しい言葉を言われたら、もっと涙がでてくるから。
「ノラ、こっち向いて」
「絶対嫌だ」
ただでさえサクの前では何回も泣いてるのに、
暗闇だからって泣き顔はもう見せたくない。
「じゃあ、手出して」
「……?」
不思議に思ったけど、振り向くよりはいいと思って布団から右手を出した。
……すると、私の手に暖かい温もりが。
「な、なにしてんの?」
思わず布団から顔を出すと、私の右手はサクの左手と繋がっていた。
それはすごく暖かくて、思ったより大きな手。
「手を繋ぎながら寝る罰ゲーム」
サクはそう言って、さらにギュッと私の手を握った。
「……な、なにそれ、意味わかんない。ってか私と手を繋ぐのが罰ゲームとかどうなの?」
また私は顔をサクから背け、焦ったように言い返した。
「ふふ、さあ?」
そんな私を見てサクが笑ってる。
ほどこうと思えばほどけるサクの手を私は握り返した。
やっぱりサクがいてくれて良かった。
サクの優しさも、サクの温もりも、私を唯一安心させてくれるものだから。
「……ありがとうサク」
「おやすみノラ」
絶対に眠ることができそうになかったうるさい鼓動がいつの間にか穏やかになっていた。
きっと、全部サクのおかげ。