黄昏バラッド
私は買い物袋を持ってスーパーを出た。
「ノラ、荷物持ってあげようか?」
その途中でふっと名前を呼ばれて、慌てて振り向くとそこにいたのは鉄さん。
「今、亮だと思ったっしょ?」
バイクに股がる鉄さんは相変わらず派手な私服姿。
「……なにやってるんですか?」
亮だと思ったっしょ?って当たり前じゃん。
私をノラって呼ぶのはサクしかいないんだから。
「俺も買い物帰りだよ。荷物バイクの後ろに乗せていいよ」
鉄さんはそう言って、私の買い物袋をバイクの荷台に置いてくれた。
帰り道が途中まで一緒らしくて、鉄さんはバイクから降りて私の歩くペースに合わせてくれている。
「店が休みで嬉しいけど暇だよな」
「………」
「あ、今俺のこと寂しいヤツだと思っただろ?」
「べつに思ってません」
なんて、嘘。ちょっとだけ思った。
暇ってことは彼女とかいないんだろうな。鉄さんと恋愛の話なんてしたことないけど。
「麻耶ちゃんこの前のこと亮に言った?」
バイクを押して歩く鉄さんの顔が少し変わった。
「……まだ言ってません」
この前のこととは尚さんが言ってたトワイライトの復活の話。いつも言うタイミングを見計らっているけど、なかなか言えずにいる。
「それならそのまま亮には言わなくていいよ」
「え?」
「尚だって本気で言ってたわけじゃないだろうし、亮のヤツまた色々と悩むと思うからさ」