黄昏バラッド


私が言うことじゃないけど、たぶん尚さんは本気で言ってたよ。

だって尚さんの性格を考えたら、そんな絵空事みたいなことをわざわざ鉄さんに伝える必要はないでしょ?

少なからずトワイライトの復活を夢見ているんだと思う。

それは鉄さんだって一番願ってることだ。


「……鉄さんって本当にサクのことを大切に想ってるんですね」

「は?気持ち悪いこと言うなよ」

私には分かるよ。

鉄さんは自分の夢よりいつもサクのことを優先に考えてる。


私もサクのことが大切。だから苦しかった全てのことを話してもいいって思ったの。

だって、サクの代わりはどこにもいないから。


べつにその気持ちがサクと同じじゃなくてもいいよ。

私が話したからって、サクが全てを打ち明ける必要もない。

……でも。


「その、色々な悩みって私に聞く資格があると思いますか?」


サクにとって私の代わりがどこかにいてもいい。

だけど、サクの気持ちを少しでも軽くできたらっていつも思うの。

鉄さんは私の言葉を聞いてバイクを押す手を止めた。


「資格なんてなくても踏み込んでやってよ。亮には麻耶ちゃんみたいな存在が必要だから」

「……鉄さん」

「それにあいつの口から吐き出さないと、これは意味のないことだから」

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