黄昏バラッド
サクはなにも言わずにメロディーだけが私の耳に響いていた。私がなんでトワイライトのことを知ってるかなんて愚問(ぐもん)だよね。
だって私はサクが夢を追っていたあのサンセットで働いているんだから。
「……それって答えた方がいいの?それとも聞こえてないふりをした方がいい?」
サクの反応は思ったより普通だった。
〝あいつは感情を隠すのが上手いから〟
ふっと前に言われた鉄さんの言葉を思い出した。
いつもの私ならこれ以上詮索しないし、独り言だよって流したと思う。でも……。
「……答えて、サク」
私たちは弱虫で、きっと過去の自分を忘れさせてくれる存在を求めていた。
だったら咲嶋亮を知りたいと思う私はサクにとって必要ではないのかもしれない。
だけど私は踏み込むって決めた。
怖いけど、私はサクに話したことで心が軽くなったから。
「歌わないよ。もう俺はあの頃の俺じゃないから」
サクの顔つきが一瞬変わったけど、やっぱり感情的にはならない。
それはだれが決めたの?
サク?それとも……。
「あの、私たちのこと覚えてます?また聞きにきちゃいました!」
タイミングが良いのか悪いのか、私たちの前に現れたのはいつかの女子高生たち。