黄昏バラッド


サクは曲を聞きにきたお客さんにニコリと笑って対応した。どんどんリクエストしても、サクは嫌な顔ひとつしないで歌ってる。

私はまたポツンとひとりぼっちになり、静かにその場を離れた。


……サクは今の自分に満足してる?

なんて、聞けもしないことが頭の中に浮かんでくる。


私はただサクが今の自分を好きならそれでいい。

それならなにも言わないし、なにも聞かない。


私はグルグルと公園を歩き、敷地内にある自動販売機の前に立った。そして喉も渇いていないのに、なんとなくジュースを買ってみる。

私が買ったのはオレンジジュース。

この公園で飲み物って言ったらこれしかないから自然とボタンを押していた。


2本買ってサクのところに戻るとまだお客さんがいて、私は噴水の前に座った。

サクは自分のために歌ってるって言ってたけど、お客さんの前で歌うサクはすごく楽しそうに見えるよ。

私はそんなことを考えながら、サクが歌う姿をジッと見つめていた。

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