黄昏バラッド


私の真剣な顔を見てサクの表情が変わっていく。私はその心の隙間が閉じないように、ギュッとサクの手を握った。


「ねえサク。話さなくてもいいよ。ずっと誰にも話さなくてもいい」

私は今の気持ち、私にしか言えない言葉でサクに訴えた。


「でも、少しの思い出に触れただけで悲しくなるものをサクはずっと胸に閉まっておける?」

「………」


私が泣いたらダメなのに、熱いものが込み上げてくる。

だって、私も人生を変えてしまうような悲しい経験をしたから。だからサクの気持ちが一番わかるの。


「苦しくならない?」

「………」

「いつかその重みでサクが……」

言葉の続きを言おうとした時、風に乗ってサクの匂いがして。気がつくとサクが静かに私の肩に顔を埋めていた。


これがサクの弱さ。

なにも言わずにうつ向くサクを私は強く抱きしめた。

本当に強く、大きな背中を力いっぱい。


サクはピクリとも動かず、私の体に顔を埋めたままだったけど、涙はまだ流れていないと分かった。

サクの泣けない理由はきっと私が想像するよりずっと深くて、悲しい。
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