黄昏バラッド
「とりあえずスタッフルームで横になってろ。夕方バイクで送ってくからさ」
鉄さんはそう言って私の背中を押した。
「まあ、先客がいるけど、うるさかったら追い出していいから」
……先客?恐る恐るスタッフルームに入ると、私の頭を過った勘は見事に当たっていた。
「お、豆じゃん。なんだよ仕事サボりに来たのか?」
スタッフルームにいたのは尚さんで、相変わらずな口調。寝ていいよと言われたソファーに座りながら、独特の匂いのタバコを吸っている。
「……サボりじゃありません。熱があるから鉄さんがここで休めって」
サボってるのは尚さんでしょ?なんて言い返す元気はなかった。
「へえ貧弱だな。つーか俺に移すなよ?」
「………」
こんな時まで尚さんは意地悪だ。でもやっぱり言い返す元気はない。
「しかたねーからソファーは譲ってやるよ。ほら」
尚さんは腰を上げて、部屋の片隅にあるパイプ椅子に移動した。
譲るとかそもそも尚さんの物じゃないし。でも頭がクラクラしてきたから私は無言でソファーに横になった。