黄昏バラッド


「ノラはベッドを使って。俺は布団が一枚あるからそれ敷いて寝る」

サクはどこまで紳士を貫くつもりなんだろうか?ここまで来てなにもないなんて、そんな展開あるはずがない。

サクは言ったとおりクローゼットから布団を取りだして、ベッドの横に敷いた。布団を敷くと部屋には足の踏み場がなくなった。

私は手の早い男は嫌いだけど、遠回しな男も大嫌い。だから……。


「同じベッドでいいじゃん。サクはいつもここで寝てるんでしょ?」

ずっと落ち着かない雰囲気でいるなら早く終わらせた方がいい。――するとサクはゆっくりと私に近づいてきた。そして……。


「痛っ……!!」

私のおでこにサクのデコピンが飛んできた。


「なに言ってんの。電気消すから早く寝るよ」

呆然としている私を無視してサクは電気を消す。


……え?え?

私はおでこを押さえながら状況を理解できずにいた。

私だってサクとしたいわけじゃないよ。でも普通男だったらなにもしないで寝るなんてありえないでしょ?
< 19 / 270 >

この作品をシェア

pagetop