黄昏バラッド
私はいつの間にか眠りについていた。
なぜか現実の続きのように尚さんと言い合いしている夢を見た。
『だって優先してる順位がお前らって〝今〟じゃねーじゃん』
夢の中でも私はなにも言い返せなかった。
「……ノ……ラ」
幻聴のようにサクの声が聞こえた気がした。おかしいね。サクがここにいるはずなんてないのに。
「ノラ」
今度ははっきりと聞こえた声。
目が覚めるとソファーの横にサクが立っていた。
な、なんで?これは夢?
「熱があるんでしょ?大丈夫?」
サクの手が私の額に触れた。この手の温もりは確かに本物で夢なんかじゃない。
「サ、サク……?な、なんで……」
私は慌てて起き上がり周りを見渡した。
ここはサンセットだよ。サクがずっと避け続けていた場所だよ。
「鉄からノラが倒れてるって連絡があって。とりあえず家に帰ろう」
サクは私の手を優しく引いた。
「だ、大丈夫だよ。私は歩けるから」
サクはなぜか私をおぶってくれようとしている。
「なに言ってんの。そんな真っ赤な顔して」
サクに無理やりおんぶされてしまった私はサクの肩に顔を埋めた。