黄昏バラッド
「……鉄から連絡があったあと、気づいたらサンセットに来てた。色々と考えてる暇もなかったよ」
私はその言葉を聞いてギュッとサクの服を掴んだ。
「俺は多分ノラにだけ心が動くんだよ。改めて今日気づいた」
私は溢れてくる感情とともに、また涙が出そうになった。
「風邪が治ったら公園に行こう。ちゃんと話すよ。ノラだけには」
私はその言葉を聞いて、何度も何度も頷いた。
曖昧な距離を保ちながら、サクの深い場所に踏み込めなかったのは怖かったから。
サクに嫌われたくない。
少しでも傍にいられるように、色々なことに気づいてないふりをしていたの。
だけど本当はずっとずっと知りたかった。
サクじゃなくて咲嶋亮のことを。
――ねえ、サク。
サクは恋をしないでしょ?
私ももうしたくないし、男なんてこりごりだって思ってたよ。でも、サクの傍を離れたくないって思う私は矛盾してる。
きっとこの気持ちはもう二度としないと決めたあの感情に似てる。
そう、恋心みたいな。