黄昏バラッド

***


仕事が終わり、私は黄昏の空の下を歩いていた。今日はサクと直接公園で会う約束をしている。

サクの口から何が語られるのだろう。

それは想像もできないけど、なにも詮索し合わない私たちの関係は今日で終わる。

それが良いのか悪いのかはまだ分からない。


公園に着くとあちらこちらで色々なメロディーが聞こえてきた。

趣味でやっている人、プロを目指してる人、ここには様々な人が歌いに来るけれど、サクはどのジャンルにも当てはまらない。


サクはなぜ歌うの?

どうして歌い続けているの?

その理由はきっと過去と繋がっている。


――♪♪♪

やけに響いてくる魅力的なメロディーの先には、サクがいつもの場所でギターを弾いていた。


黄昏色に染まるサクがすごく綺麗で、私もサクと同じ。

きっとサクにしかこの心は動かないんだと思う。


「サク」

名前を呼ぶとサクはニコリと笑ってギターを止めた。


「お帰りノラ」

この独特の雰囲気は他の誰も真似できない。

私はゆっくりとサクに近づき、そっと隣に腰を下ろした。
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