黄昏バラッド


「寒かったでしょ?はい、これ」

サクが差し出してきたのは缶のココア。

「少し前に買ったからちょっと冷えちゃったけどまだ温かいから」

私はそれを受け取り、ギュッと両手で缶を握りしめた。


いつもサクとどんな話をしていたっけ?

少しの沈黙でさえ、今はドキドキしてしまう。


「緊張は移るって本当だね。ノラがそんな顔してるから俺までドキドキしてきたよ」

サクは困った顔で苦笑いをした。


「え、ごめん。そんなつもりは……」

「はは、嘘だよ。緊張なら公園に着いた時からしてた」

いつも平常心のサクも緊張するんだね。だからそれを紛らわす為にギターを弾いていたのかもしれない。


「……迷ってるならムリに話さなくてもいいんだよ。サク」

たしかにサクの過去を知りたいのは本当だよ。
でも無理やり聞きたいわけじゃない。


「ううん。迷ってない。迷ってないけどちょっと怖い」

「………」

「ノラも俺に話す時こんな気持ちだったのかなって、ギター弾きながら考えてた」

サクはこんな時でさえ、自分以外のことに目を向ける。


私も怖かったよ。だって打ち明けるってことは当時を思い出すことだから。

それでも話したいと思ったのはサクだから。

サクが隣にいてくれたからだよ。
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