黄昏バラッド


「うん。16歳から22歳の6年間付き合ってたよ」


――ドクン。

6年間という単語を聞いて私の心臓が跳ねた。

私にとってはとても長い数字で、それだけの間ひとりの人と付き合うことが想像もできないことだったから。


サクは今27歳、つまり彩さんと別れたのは5年前。

今まで何回も話の中で飛び交ってきたサクの5年。

鉄さんや尚さんの前から姿を消した5年前。そしてトワイライトとして歌わなくなったのも……。


「トワイライトを抜けた理由は彩さんと別れたから……?」

それを聞いた瞬間、サクの顔がサクじゃなくて咲嶋亮になっていた。


きっとここだ。

サクの一番深い部分。

胸の奥に閉じ込め続けている悲しみの原因。


「5年前に死んだんだ。俺の運転していた車で……」

ドクンドクン、ドクン……。


サクの手が小刻みに震えていた。私は今まで勘違いをしていたのかもしれない。

サクは私と同じ。過去をリセットして新たな自分として生きてるんだって思ってた。

でも違う。

サクはリセットなんてしてなくて、むしろ時間は5年前で止まったまま。

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