黄昏バラッド


「私はサクが生きていてくれて嬉しいよ。だってそうじゃなきゃサクという人間に出逢えなかったから」

ごめんね。こんなことを言うなんて本当に不謹慎だよね。

だけどもしその事故でいなくなったのがサクだったらって考えたら急に怖くなった。


私はサクに出逢わない17年間を生きてきたはずなのに、今はもうサクがいないこの先の未来のほうが怖い。

もしサクに出逢えてなかったら私はずっとひとりぼっちのままだった。

サクは少し考えるように無言になって、再び私の手を握った。


「……その事故に遭う数日前にね、トワイライトのデビューが決まってたんだ」

「………」

「でも彼女が死んで、なんのために歌うのか誰のために歌ったらいいのか分からなくなった」


サクがトワイライトを捨てなきゃいけなかった理由。それだけ彩さんはサクにとって音楽よりも中心にいた。


「……いつの間にか歌は楽しいものじゃなくて苦しいものになってた」

「………」

「だからトワイライトを抜けて歌わなくていい場所を探しに行ったんだ。それと同時に俺は鉄たちの夢とトワイライトの未来を奪ったんだよ」

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