黄昏バラッド


そのあと、私とサクは色々な話をしながら家へと帰った。サクの過去を知って、私たちの距離は前より近くなったような気がする。


「ノラに話せて良かった」

その日の夜。そう寝る前にポツリとサクが呟いたのを聞いて、私はまた泣きそうになった。


私に話したことでサクの心は少し軽くなったんだろうか?

サクの過去は私が想像していた以上にツラいもので、それを上手く受け止めれる自信はない。

でも私にできることはサクを理解して傍にいてあげること。ただそれだけだと思う。


本当はサクを強く抱きしめてあげたかった。
でもしなかった。できなかった。

私ね、サクが泣くって思ってた。今日こそ涙を流して弱さをさらけ出してくれるって。

そしたら私は強くサクを抱きしめてあげたいって思ってたの。でもサクは今日も泣かなかったね。


――ねえ、サク。

涙を流すってことは内側に秘めた弱さや悲しさも流すってことなの。

サクの内側にはまだ表には出せない悲しみが沢山あるんでしょ。だってサクが感情と共に生み出す歌はいつも泣いてる。

涙で前が見えないくらい切ないメロディーなんだよ。

だからいつか歌じゃなくて、サク自身で涙を流して欲しいよ。
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