黄昏バラッド


その日はサクがオムライスを作ってくれて、それを小さなテーブルで食べた。

「今日は歌いに行かないんだね」

いつもなら公園に行っている時間。毎日行ってるわけじゃないから珍しいことじゃないけど、今日はもっとサクの歌を聞きたかったのに。


「今日はとくに寒いからね。ノラがまた風邪引いたら困るし」

サクはオムライスを口に入れながら、冗談まじりに返した。


「私そんなに体弱くないし。あの時はたまたま……」

「はは、そうなの?でも顔真っ赤で可愛かったよ」

「……なっ」

可愛いなんて言われ慣れてない私はすぐにこんな言葉に動揺してしまう。サクにとって深い意味なんてないのに。

「か、からかわないでよ。バカ」

私はそれを隠すように、オムライスを食べる手を早めた。


「からかってない。ノラは可愛いよ」

もう、サクはすぐに私を子ども扱いするんだから。それなら子供のふりをして聞きたいことを聞いてもいい?


「……サクは私に話したことでなにか変わった?」

本当はこんなことを聞く前に気づいてあげなきゃいけないのに。でも私は子どもだから、サクの些細な変化にも気づけない。

だから言葉にして。

私に過去を打ち明けたこと、後悔してない?

ちゃんとサクにとってプラスになってる?
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