黄昏バラッド


「変わったよ。おかげで昨日はぐっすり寝れた」

そう言ったサクの顔を見て、目先のことばかり考えるのは止めようと思った。

私もサクに過去を打ち明ける前はツラい出来事は夢の中まで追ってきた。もしかしたらサクもそうだったのかもしれない。

先のことは分からないけど、サクが一瞬でも安心できる場所を作れればいい。それが今私のいる意味。


「ねえ、サク。手だして」

不思議そうに差し出したサクの手のひらに私はある物を乗せた。

「え、これは……」

それは渡そうと思って渡せずにいたねんねこストラップ。しかもサクの持っていないシークレットバージョン。


「当てるの苦労したんだからね。コンプリートしたって言ってたくせに」

また可愛くない言い方をしてしまった。サクは驚いたようにストラップを天井に掲(かか)げている。ねんねこストラップのシークレットはクリスタルバージョンで全体が透けて見えるようになっていた。


「ありがとうノラ。早速スマホに付けるよ」

嬉しそうな笑顔。どっちが子どもなんだか。まあ、この顔が見たくて当てたんだけどね。


「これ、キラキラしててノラみたい」

ストラップを見つめながら、サクがそんなことを言った。


……キラキラしてる?私が?

なぜサクにはそう見えるのか分からないけど、キラキラしているのはサクのほうだよ。

それは眩しくてクラクラするぐらい。
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