黄昏バラッド


「まあ、色々忙しくなるからその前にサンセットに寄っておこうと思ってよ」

なんだかんだ言って、尚さんもサンセットを大切にしてるんだな。

「鉄にたっぷり自慢してやるんだよ。店長代理とかいつまでなめた生活してんだよって」

この意地の悪ささえなければいい人なのに。


「あの、この前はありがとうございました。熱が出た時サクを呼んでくれたって……」

「あ?なんの話だよ。それに呼んだのは鉄だ。俺じゃねえ」

でも呼べって言ってくれたのは尚さんでしょ?
尚さんは私以上に素直じゃないね。


「あー肩いてえ。サンセットに着いたら揉めよ。豆」

尚さんは照れ隠しなのかなんなのか、偉そうに右肩をグリグリと回している。


「嫌です。マッサージのお店に行ってしてもらえばいいじゃないですか」

「そんな時間はねーよ。こう見えて一応売れっ子バンドなんでね」

私にはいつも暇そうに見える、なんて言ったら怒られるから言えない。

「お前テレビとか見ないわけ?昨日だって音楽番組に出てたんだけど」

テレビは基本的にあまり見ない。好きな芸能人もとくにいないし。
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