黄昏バラッド
「はあ。今度ライブDVDやるからそれ見て勉強しとけ」
「べ、勉強ってなんですか?イーグルの曲なら知ってますよ。少しだけなら……」
最後の言葉は一応小声で。
「少しじゃなくて全部聴け。聞いたら絶対ファンになるから。つーかファンにならない女はいない」
大した自信ですね。ある意味尊敬するほど。
「……イーグルの曲も素敵ですけど、私はサクのファンですから」
これは曲げられない。音楽で泣いたのも心が動いたのもサクのメロディーだけだから。
それを聞いた尚さんは不機嫌そうに煙草をくわえた。独特の甘い香りは私の鼻をすり抜けていく。
「どいつもこいつもなんであいつを選ぶんだよ」
その背中は少し弱々しくて尚さんらしくない。
尚さんはいつもサクに対して意地悪ばかり言う。そこに愛情は存在してもなにか違う嫉妬みたいなものがあるみたいに。
「……尚さんが好きだった人って高瀬彩さんですよね?」
サクの大切な人であり、トワイライトというバンドを作ってくれた人。