黄昏バラッド
「亮から聞いたのか?」
尚さんは歩いてた足を止めて私を見た。
「……いえ、尚さんのことは聞いてないですけど彩さんのことは聞きました」
人の過去に土足で踏み入ることはしたくないし、これは私には関係のないこと。でも私には尚さんも5年前の出来事を乗り越えていないように見えたから。
尚さんは再び煙草を吸いながら、煙を空に大きく吐いた。
「ふーん……。サンセットに着く間、昔話してやるよ」
尚さんはその言葉どおり、歩きながら昔のことを話してくれた。
彩さんとは中学、高校と同じ学校だったこと。
そしてサンセットでバイトし始めた彩さんを通じて、鉄さんやサクに会ったこと。
「べつに俺は音楽なんて興味なかったしやるつもりもなかったのによ」
「………」
『あいつらの音聞いたら何か羨ましくなって。自分もあの世界に行きてーって思ったんだよ」
なんかとても意外だ。
尚さんは昔から音楽が好きで、小さい頃からドラムをやっていたんだろうなって勝手に思ってた。
音楽を始めたのがそんな理由だったなんて。
「まあ、一番のきっかけは高瀬だけど。あいつがあいつらの音に夢中だったから」