黄昏バラッド
:涙の糸
サンセットに着くと、私以外の従業員たちが全員出勤していた。
「麻耶ちゃん遅かったね……げ、尚」
私と一緒に来た尚さんを見て鉄さんが露骨に嫌な顔をした。
「てめえ俺は客だぞ。とりあえずホットコーヒーくれ」
尚さんはそう言って、いつものカウンター席に座った。
「麻耶ちゃんなんでイーグルの尚さんと?」
「大丈夫?ヘンなことされなかった?」
他の従業員たちにとっても尚さんはあまりいい印象じゃないみたいだ。
「大丈夫ですよ。たまたま外で会っただけですから」
まさか尚さんと昔話してたなんて誰も思わないだろうな。
「……で?今日はなんの用だよ」
鉄さんは乱暴にコーヒーを出すと呆れ顔で腕組みをした。
「用がないと来ちゃダメなのかよ?いつからこの店はそんなにお高い店になったんですか?」
……ダメだ。鉄さんと尚さんが顔を合わせると絶対に喧嘩が始まってしまう。従業員たちもその空気を読んでふたりに近づこうとしない。
「……はあ、イーグルは来週からツアーだろ。呑気にコーヒー飲んでていいのかよ」
鉄さんはなんだかんだ言ってイーグルのことを良く知っている。きっと気にならずにはいられないんだと思う。