黄昏バラッド
暫く歩くと、穏やかなメロディーが耳に聞こえてきた。
――♪♪♪。
この曲調は間違いなくサクだ。それに気づいた尚さんはメロディーに呼び寄せられるように歩いていく。
そして、私の目にギターを弾きながら座るサクの姿が目に入った。
「よう、久しぶりだな」
サクの目の前で、尚さんの足が止まった。
……ドクンドクン……。
口から心臓が飛び出そうだ。だけどきっとサクの心臓のほうが大変なことになってるはず。
「……尚」
5年ぶりに呼ぶ尚さんの名前はやけに重く聞こえた。
サクの表情は一瞬動揺していたけど、私と鉄さんを見つけるとすぐに状況を把握したようだ。
「元気そうだな。まさかこんな場所で音楽やってるとは思わなかったぜ」
「………」
尚さんの口調は普通だったけどそれが逆に怖い。まるで嵐の前の静けさみたいで。
「音楽、辞めたんじゃなかったのかよ?」
「………」
「なんで5年間顔見せなかった?俺たちとそんなに縁を切りたかったってわけか?」
尚さんは今までの不満をぶつけるように質問したけど、サクはずっと無言だった。