黄昏バラッド
バンドは結成があるから解散がある。トワイライトは活動していないけどまだ息をしている。
サクの気持ち次第でまた動き出せる。
「……俺はもうステージには立てない。トワイライトに戻る資格はもう……」
「……っ!」
その時、バコッという鈍い音が公園に響いた。
尚さんに殴られたサクの体が地面へと落ちていく。
「資格?音楽にそんなものは必要ねーんだよ」
拳を握りしめた尚さんは怒りを抑えられずに震えていた。
「てめえはプロになりたかったんだろ?だから音楽を始めたんだろ?」
「………」
「その夢は?音楽に対しての野心はどこにいったんだよ?あ?」
サクが殴られた箇所を押さえながら体勢をゆっくりと戻した。
「もう俺はあの頃みたいに歌えない」
サクが珍しく強い目をしていた。それを見た尚さんの手が再びサクを掴む。
「高瀬がいないから?あいつの死は自分のせいだからあの頃みたいに歌えないって?ふざけんじゃねーよ!!」
そんな怒鳴り声に公園にいた人たちの視線がふたりに集中した。それでも尚さんの怒りは収まろうとしない。
「……お前は高瀬のせいにして逃げてるだけだ。自分で自分の首を締めて、許してもらおうとしてるだけだろ?」