黄昏バラッド


その言葉にサクがピクリと反応した。そしてじっと尚さんを見つめている。


「……尚には俺の気持ちなんて分からないよ」

そうサクが呟くと、尚さんは悲しい顔で目を細めた。


「ああ、分からないね。お前の気持ちなんて。なにか変わると思ってたけど会いに来たのは無駄足だった」

終わってしまう。

このままじゃ本当にトワイライトも音楽で繋がっていた3人の絆も途絶えてしまう。

その様子を鉄さんは黙って見ているだけだった。鉄さんだって言いたいことは沢山あるはずなのに。

もうダメなの?

もう本当にトワイライトは動き出さないの?


「……俺の気持ちは変わらないよ。ごめん、本当に」

これがサクの答え?

それを聞いた尚さんはサクと距離をとった。


「なら最後に言わせろ。お前は俺から夢だったトワイライトを奪って、好きだった女も奪った」

座り込んでいるサクに向かって見下ろしながら尚さんが続ける。


「……お前のことは許せない。でも恨んだことは一度だってねーよ」

……尚さん。

いつもサクに対して憎まれ口ばかり言っていたけど、それは無視できない存在だから。

許せなくても切り離せない。そのぐらい尚さんはサクを大切に想ってた。
< 225 / 270 >

この作品をシェア

pagetop