黄昏バラッド
「……なあ、亮。いつまでこんなところで腐ってんだよ。いつまでひとりで背負いこんでるつもりだよ?」
尚さんの口調は厳しいけど優しかった。それに反応したサクはうつ向いてた顔を上げた。
「ツラいのはてめえだけかよ?泣きたくて泣けないのはてめえだけかよ?亮」
そうだ。泣きたくて泣けなかったのはみんな同じ。
だって音楽に対しても、夢に対しても、彩さんに対しても。みんなみんな同じ気持ちで青春時代を過ごしていたはずだから。
「……歌えよ。ただ音楽が好きで歌が好きで夢を追ってたあの頃みたいに」
胸が熱くなった。こんなにも強い絆を私は知らない。
尚さんはゆっくりとサクと同じ目線に座り、弱いその肩に手を触れた。
「もうこんな狭い世界で生きるのはやめようぜ。俺たちがいる。お前はひとりじゃねーよ」
――その時、サクの頬に一筋の涙が流れた。
サクはどれほど自分を責めていたの?
暗くて長い夜をひとりでどうやって過ごしたの?
でももう大丈夫。
サクがどれだけ距離をとっても、みんな離れていかない。
それはサクだから。
サクが誰よりも優しい人だからみんな戻ってくるの。
だからムリして前に進まなくても、誰かが背中を押してくれる。そしたら身を委ねてゆっくりと踏み出せばいい。
サクは重たい糸が切れたのか、ボロボロと瞳から涙が溢れていた。