黄昏バラッド


私たちが向かった場所は家から少し離れた川沿いの土手。太陽が水面に反射して宝石みたいにキラキラしている。


「なんかノラと肩を並べて歩くの久しぶりだね」

サクが嬉しそうに言う横顔もまた私にはキラキラして見えた。


「うん。ふたりが同じ休みの日ってあんまりないから」

不思議とサクとなら無言の時間も心地良い。多分この穏やかな空気もサクに惹かれた理由のひとつ。


「……サクは私と行きたい場所とかあったの?」

いつだってサクは私の意見を最優先してくれた。


「うーん。あると言えばあるし、ないと言えばないかな」

なにそれ?サクの曖昧な言い方に私は首を傾げる。


「ノラといるといつも楽しいから、どこに行ってもあまり変わらない気がする」

ニコリと笑うサクを見て、私は不自然に目を反らした。

たまにサクってわざと言ってるんじゃないかって思う。その一挙一動が私を無駄にドキドキさせる。


「……♪♪」

その内サクはご機嫌に鼻唄を歌い始めた。

きっと無意識なんだろうけど、それもやっぱり綺麗なメロディーだった。
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