黄昏バラッド


川沿いを歩くスピードはゆっくりで、私たちには丁度いい。この道に終わりがなければいいのにって何回も思ったよ。

私が今日サクと歩きたかった一番の理由は聞きたいことがあったから。

私にとってもサクにとっても、すごく大きなこと。


「サク。覚悟は決まった?」


――〝サンセットで待ってる〟

鉄さんと尚さん気持ちに答えを出す時間は十分にあった。その背中を押してあげるのも私の役目だって勝手に思ってる。


「うん。明日仕事が終わったら行こうと思ってる」

嬉しいような、悲しいような複雑な気分。

だってサクが前に進むたびに少しずつサクはいなくなって、咲嶋亮に戻っていく。


「そっか。頑張れサク」

この言葉に嘘はない。寂しいけど私もサクが過去を乗り越える日を待っていた気がする。


「ノラ、ありがとう」

何回も聞いたサクのありがとうだけど、今のが一番いい顔をしていた。


ねえ、サク。

サクは出逢った時、私のことを猫だと言ったね。

野良猫はエサをくれる人に寄り付くって言うけど私は違う。

サクが親切にしてくれたとか、居場所を与えてくれたとかそんな理由じゃなくて。

ただ暖かかっただけ。

サクの傍にいると太陽みたいにポカポカで、ずっとここにいたくなる。

そんな単純な理由だって言ったらサクは笑う?
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