黄昏バラッド
それから数時間が経ち、お客さんの足がまばらになりはじめる午後2時過ぎ。荒っぽくサンセットのドアが開いた。
「ういーす」
まるで常連客のように現れたのは尚さん。
レザーのキャップを被り、顔の半分が隠れるくらい大きなサングラスをしていた。尚さんはいつものカウンター席に座って相変わらずのひと言。
「おい、豆。お茶」
偉そうな態度は変わらないけど、尚さんが良い人なのはもう知っている。
「どうぞ。ツアー忙しそうですね」
お茶と一緒にそんな言葉を言うと尚さんがニヤリと笑った。
「おう。お前やっとイーグルのファンになったか?」
申しわけないけど、イーグルのことは昨日見たテレビで得た情報。ツアーが始まってから、よく特集もやってるし。
「尚。お前忙しいんだろ?大丈夫なのかよ」
そんな中、鉄さんが呆れた顔をしていた。
「余裕だよ。今日の夜に新幹線に飛び乗れば明日のライブには間に合うから」
全然余裕じゃないスケジュールだけど、それだけサクが大きな存在ってことだよね。