黄昏バラッド


今日の尚さんと鉄さんは喧嘩もなく珍しく仲良さげに見えた。

暫くして尚さんはスタッフルームで仮眠を取り始めた。なんだかんだいって疲れは溜まっているみたいだ。


「鉄さん、よかったですね」

私は洗い物をしながら隣にいる鉄さんに言った。

「よかったって?」

聞き返されたその言葉に私は洗い物の手を止めた。


「だってトワイライトとしての3人が集まる日をずっと待ってたじゃないですか」

たぶん鉄さんが一番トワイライトに対しての気持ちが強い人だったから。


「でも亮がまたバンドやってくれるって決まったわけじゃないけどな」

それでもやっぱり鉄さんは嬉しそうだ。


「大丈夫ですよ」

「……?」

「サクはトワイライトに戻ってきます」


もしその気がないのなら、サクはサンセットに来ない。

音楽の中で生きているサクにとって、トワイライトを切り離すのはムリだと思う。

だからこそサクは今まで悩んで苦しい思いをした。


「それにサクにとってサンセットは始まりの場所ですから」


だから戻ってくる。
――もう一度始めるために。
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