黄昏バラッド


黄昏色に染まる夕日がドアの隙間から差し込んできた。その眩しいオレンジ色の中から現れたのは待ち焦がれたサクの姿。

ドクンと見慣れているはずなのに、なぜか私の心臓が高鳴るのを感じた。


ドクンドクン……。

サクが店内に足を踏み入れると同時にドアがパタンと閉まった。呼吸が上手くできないのはきっとこの場にいる全員の緊張感が伝わってくるからだ。

サクは迷うことなく鉄さんと尚さんを見つめ、深く頭を下げた。


「色々考えたけどやっぱりまずは謝らせてほしい。鉄、尚、今まで本当にごめん」

これがサクの第一声。


「なにも言わずいなくなったこと、迷惑をかけたこと、トワイライトを中途半端にしてしまったこと。本当に本当にごめん」

だれかに言わされたわけではなく、自分の言葉で。

微かにサクの体が震えていた。ここに来る間たくさん考えて、たくさん悩んで、たくさん緊張したんだろうね。

そんなサクの肩に触れたのは鉄さんだった。


「亮、もう頭を上げろ。俺はお前がこの場所に来てくれただけで十分だ」

それでもサクが頭を上げようとしない理由は、許しをもらわなくてはいけない人物がもうひとりいるから。

独特の匂いがする煙草を灰皿に押し付けた尚さんは、静かにサクを見つめていた。
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