黄昏バラッド
「謝罪はもういい。過去のことはもうどうにもならねーからな」
「………」
「俺が聞きたいのは〝今〟の気持ちなんだよ」
サクの今の気持ち。そういえばサクが優先にしてきたものはいつだって過去だった。
尚さんはそれを分かった上で、もう一度あの言葉を言った。
「トワイライトはどうするつもりだ?」
無数に繋がってる糸の中で中心にあるのは音楽。そしてトワイライト。
サクはゆっくりと顔を上げて尚さんと鉄さんを見た。
その顔は私の知らない顔で、もうサクじゃない。
「やらせてもらえるならやりたい。俺はもう一度トワイライトとして音楽をやっていきたい」
これがサクの気持ち。私は必死で泣くのを我慢していた。
〝サクはトワイライトとしてもう歌う気はないの?〟
〝歌わないよ。もう俺はあの頃の俺じゃないから〟
サクは前にこう言ってた。多分それは嘘じゃなくてあの時のサクの答え。
だけど今は違う。サクじゃなくて咲嶋亮としての答えに辿り着いたんだね。
それを聞いた尚さんは厳しい顔をした。
「なに言ってんだよ?お前」
「………」
「トワイライトはお前がいないと動き出せない。だからもう一度歌ってくれ。亮」
その瞬間、サクの瞳に光るものが見えて何回も何回も深く頷いていた。