黄昏バラッド
Twilight
――トワイライト。
意味は黄昏。
サクが歌は1日の始まりじゃなくて、1日の終わりに聞いてほしいからって名付けたバンド名。
5年間止まったままだったトワイライトが今動き出す。
それはゆっくりと息を吹き返した瞬間だった。
「もう難しい話はやめよう。とにかく今は前に進むだけだ。そうだろ?」
鉄さんは泣きそうな顔を隠すようになにかの準備をし始めた。
「ああ、まずはやってみなきゃ始まらねえ」
尚さんはそう言って羽織っていたジャケットを脱ぎ捨てた。
なにが始まるのか全く理解できない私はただそれを見ているだけ。
「腕はなまってねーよな?亮?」
尚さんがサクに問いかけるとサクはキラキラした目で答えた。
「――もちろん」
サクは持ってきたギターを肩にかけてチューニングを始めた。そして鉄さんはベースを尚さんはドラムに座り、ガチャガチャと音を出している。
高鳴る鼓動、期待しないわけがない。
3人はサンセットのライブハウス用に取り付けられたステージに立った。
最後にマイクスタンドを中央に置いたサクの視線が私に向く。
キー……ンと不協和音が聞こえたあと、店内のスピーカーからサクの声が響いた。
「トワイライトとしての5年振りの音楽。聞いてくれる?ノラ」
後ろに尚さん、右隣に鉄さん、そして真ん中にサク。
ステージに立つ3人はまるで別世界で、なんとも言えないオーラをまとっていた。
これがトワイライトの形。私は唇を噛みしめて静かに頷いた。