黄昏バラッド
***
次の日の朝。サクが久しぶりに公園に行こうと言ってきた。私の気持ちを見透かして気を遣ってくれたのかもしれない。
いつもと変わらないサンセットへと道のり。だけど私の変化は確かに存在している。
――チリンチリン……。
店のドアを開けるとそこにはカウンターでうたた寝している鉄さんの姿が。
「鉄さん?どうしたんですか?」
慌てて体を揺さぶると、寝ぼけた様子で鉄さんが起きた。
「あれ麻耶ちゃん。なんで……」
「なんでってバイトだからですよ?っていうか……」
よく見ると鉄さんの格好は昨日と同じだった。
「え、嘘?もう朝?」
鉄さんがとっさに席を立つとテーブルに置かれていた楽譜がパラパラと床に落ちた。私はそれを拾いあげて、その全てがサクの書いた楽譜だと気づいた。
「もしかして昨日家に帰らなかったんですか?」
そういえばサクも昨日は随分遅い時間に帰ってきたっけ。
「あーうん。亮が書いた楽譜を見て自主練してたら寝ちゃったみたいで」
私は楽譜をトントンと綺麗に整えて鉄さんに渡した。
私に音楽の知識はないし楽譜も読めないけど、
これがすごいものだってことは分かる。
こんなもの見せられたらすぐに弾いてみたくなっちゃうよね。