黄昏バラッド
それから数分が経ち、すぐ止むと思っていた雨は激しくなり強風も吹いてきた。
……なにこれ、台風じゃないよね?
小降りぐらいなら多少濡れてもいいけど、こんな雨じゃ外に出れない。私はとりあえずサクの家の前に座った。
サクの家のポストは簡単に開いてしまうほど歪んでいた。
入れた鍵は取ろうと思えば取れるし、雨が止むまで家の中で待てばいい。でもやっぱりそんな図々しいことできないよ。
サクは他人で、サクにとって私も他人で。
一晩泊まったからってそれが変わるわけじゃない。
サクは優しい人だけど、きっと優しくないサクもいると思う。
私がサクに甘えることは簡単だけど、お互いのことを知れば知るほど嫌な部分も見えてくる。
サクの嫌な部分を見たくないんじゃなくて、私の嫌な部分を見たサクを見たくないの。
サクはおせっかいでお人好しで優しい人。
そんないい思い出のままでいたい。