黄昏バラッド
***
私はそのあと、サクと約束したいつもの公園に向かっていた。
夕暮れ時のこの時間が最も好きな時間であり、サクの歌を口ずさみたくなる。それはきっと離れていても同じだよ。
――♪♪♪
公園に着くと様々なメロディーが耳に聞こえてきた。
ここは最初から夢を追う人で溢れていた。その中で私が導かれるのはやっぱりサクの優しい音楽。
……♪♪…♪
人気のない場所でギター、一本で歌う姿。
私はこの姿に何回も何回も恋をした。
「……サク」
そう呼び掛けると、サクはニコリと私を見た。
「ノラおかえり」
もしかしたらサクの言葉の中で私は一番この言葉が好きかもしれない。サクの〝おかえり〟は私を安心させてくれる魔法だから。
「寒くない?早く隣においで」
サクの手招きに甘えて私は隣に腰をおろした。
「サクこそ寒いでしょ?手が真っ赤だよ」
ギターを弾いている手は寒さで悴(かじか)んでいる。私はサクの痛そうな手を取って自分の両手で包んだ。