黄昏バラッド


歌が終わると体の寒さもどこかに吹き飛んでいた。


ねえ、サク覚えてる?

サクは前に私をファン1号だって言ってくれたでしょ?

トワイライトが有名になったらそれは最高の自慢話になるね。でも私はサクとの思い出を誰かに話すことはないよ。

だってもったいないじゃない。私だけの宝物であって欲しいから。


「サク好きだよ。サクの歌もサクの音楽もサク自身のことも」

私ね、いつの間にかサクが隣にいることが当たり前になってた。それは名前のない関係で、お互いを縛るものはなにもない。

そのほうがラクだって思ったこともあるけど、私はサクのファンだから好きって口に出して言うよ。


「……ノラ」

私の〝好き〟をサクがどう受け取ったかは分からないけど、それでいい。

私たちの最終地点は自分の足で歩くこと。


「サク、絶対に夢を叶えてね。私は誰よりもサクの音楽が大好きだから」

それは遠く離れたって同じ。

弱虫だったノラとサクはもうどこにもいないよ。
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