黄昏バラッド
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次の日の朝、起きるとサクはもう仕事に出掛けていた。
私は部屋を見渡して、自分の荷物を整理した。
ここに来た時はなにも持っていなかったのに、いつの間にか私の私物が増えていた。
それをひとつずつをバッグに詰めて、久しぶりに制服を手に取った。着てみるとなんだか懐かしくてもう何年も着ていない感覚。
毎日パジャマで着ていたサクのスウェットを綺麗に畳んで、それをベッドの上に置いた。
この部屋は私の……いや、ノラの帰る場所だった。
ここで過ごした思い出があるから、私は強く旅立てる。
次に用意したのは一枚の紙。
ごめんね。やっぱり私はサクの顔を見てさよならなんて言えなかった。だってずっと傍にいたくなるから。
【サクへ】
そう書いた手紙の続きは沢山ありすぎて書ききれない。書いてる内に決心が鈍って、踏みだす勇気がなくなりそうで。
だから書いた言葉はたったの一行。
【サク、今までありがとう。いってきます】