黄昏バラッド
寂しくないと言ったら嘘になる。
当たり前だ。私にとってサクがいない日常なんて想像できないから。出逢った時間より、知らなかった時間のほうが長いのにね。
私はサクの前ではいつも子どもで、背中を丸めて守られてばかり。
だから胸を張って未来へと歩き出したサクを見て、私もこのままじゃダメだって気づいたの。
サクに甘えて現状維持するのは簡単だけど、足手まといだけにはなりたくない。私もちゃんとひとりで歩いて、これからのことを考える。
もう迷いはない。
――ガチャリ。
サクが置いていった鍵をかけて、私は家を出た。そしていつもどおり鍵はポストの中へ。
すると、ポストの入り口になにかか挟まっているのに気づいた。手紙というよりは正方形に折り畳まれた紙のよう。
それを手に取るとそこには〝ノラへ〟と書かれていた。
……ドクン……。
サクから私への手紙?
もしかしたらサクは私の行動を察して別れの手紙を用意したのかもしれない。
ドクンドクン……。
なにが書いてあるのか確かめないまま、私はそれをとっさにポケットに入れた。
だってサクから〝さよなら〟なんて言われたら涙が止まらなくなりそうで。