黄昏バラッド
***
あれからどのくらいの時間が経ったんだろう。
アパートの屋根から垂れる水滴はいつの間にか大きな水溜まりになっていて、相変わらず雨は止みそうにない。
時計がないから確認できないけど、外に出てかなりの時間が経ってる気がする。
こんな風にサクの家の前でうずくまって、本当に野良猫みたいだ。
あの町を出て1日が経ったけど、なにか変わったかな……?
多分きっとなにも変わってないだろうけど。
あんなに命よりも大事だったスマホを置いてきたのは正解だった。だって連絡が来ても返す気なんてないし、もう関わりたくない。
いや、違う。
誰からも連絡が来なかったらって思うのが怖かったのかも。
鳴らないスマホなんて持っていても意味ないから。
「……ノラ?」
そんな声に埋めていた顔を上げた。
そこには傘をさしたサクが立っていて、私はとっさに目を反らした。
……サクが帰ってくる前にどこかへ行く予定だったのに、これじゃ私の嫌いな図々しい人間じゃん。
なのに、なんでサクを見た瞬間少しホッとしたんだろう。