黄昏バラッド


公園に着くと二年前とは変わらず、歌う人がいた。

♪♪……♪♪

きっとみんなこの場所で夢に向かって頑張ってるんだよね。その姿もまた懐かしい。


サクと離れてから、私は何度もサクの歌を口ずさんだ。

そのたびに強くなって、あの頃を思い出す。

時々、夢だったんじゃないかって思うけど、サクがくれた歌は確かに私の中にある。 あの歌詞も何度見返したか数えきれない。

そんなことを思いながら公園を歩いていると、心地よいメロディーが耳に聞こえてきた。


――♪♪……♪♪
♪♪……♪……。

だれにも真似することができない心を打つこの音楽。


バカだね。いるはずなんてないのに。

そう思いながらも、私はこのメロディーに導かれてしまうんだ。

 
♪♪……♪

そこにいたのはギター、一本で座り込む姿。風に揺れる黒髪がサラサラとなびいて、私の瞳をさらっていく。

いるわけがない。ねえ、そうでしょ?

何回も何回も自問自答して、やっぱり私はこの名前を呼んでしまう。


「サク」
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