黄昏バラッド
♪♪……♪……。
ギターの音色がピタリと止まり、その視線が私のほうに向いた。頭の中で何度も思い出した姿。
それは紛れもないサクだった。
「……ノラ?」
この名前も二年ぶり。呼ばれただけで泣きそうだ。
先に近づいてきたのはサク。ギターを置き、ゆっくりと私との距離が縮まっていく。
ドクンドクン……ドクン。
まるで時間が止まったみたいに長い。
それは息をするのも忘れるぐらい。
ドクンと私の鼓動が高鳴ると、サクの足は私の目の前で止まった。
サクだ。夢なんかじゃない。
「……本当にサクなの?」
私はサクを前にしても確かめずにはいられなかった。するとサクは以前と変わらない顔で笑った。
「そうだよ。ノラ」
じわじわと涙が滲んできたけど、私は必死で我慢した。
だってサクと別れる選択をしたのは私なんだから。もう幼い私じゃない。涙だって我慢できるようになったんだから。
「久しぶりだね。元気だった?」
私は平常心を保ってサクに問いかけた。
「元気だったよ。ノラは?」
他愛ない会話がなんだかよそよそしい。
「私も元気だよ。……あ、トワイライトのデビューおめでとう。遅くなっちゃったけど」
私は上手く言葉が出てこない中、なんとか伝えたいことを探していた。