黄昏バラッド


私ね、サクといると1分1秒が愛しくて仕方がないの。

一緒にいた時間は随分前のように感じていたのに、あっという間にその壁がなくなった。もしかしたら遠く離れていても繋がっていたのかもしれないね。

だって寂しがり屋なふたりだから。


「ノラじゃない。麻耶だよ。私の名前は北原麻耶」


ノラとサク。

ふたりが出逢ったのはお互いに弱虫で、友達でも恋人でも埋められない穴を埋め合うため。

北原麻耶と咲嶋亮。

このふたりだったら恋をするために出逢ってもいいでしょ?


「麻耶。好きだよ。ずっと傍にいてくれる?」

私はその言葉に深く頷き、サクの体に抱きついた。


「おかえり、麻耶」

世界で一番好きな言葉。私の居場所はいつだってこの人の隣だった。


もう悲しい歌は聞こえない。

聞こえてくるのはあなたがくれたラブソング。


「ただいま、亮」

私たちを包む光がいつの間にか黄昏色に染まっていた。



――【黄昏バラッド 完】
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