黄昏バラッド
「外でなにしてるの?」
サクはビニール傘を閉じながら、屋根の下に入った。
「……出ていこうと思ったんだけど、雨が降ってきたから止むの待ってる」
私は冷たいコンクリートに体育座りしたまま、ぼんやり水溜まりを見ていた。
サクはなにを考えてるだろう。
同情を引こうとしてこんなことやってるって思われたら嫌だな……。すると、冷えきった私の頬に暖かいなにかが触れた。
「ずっと外で座ってたの?もう夕方だよ」
しゃがみこんだサクの手は私の頬に触れていた。
夕方……?そんなに時間が経ってたんだ。
「多分もうすぐ雨も止むと思うし、心配してくれなくていいよ」
私はわざと素っ気ない態度をした。
こんな可愛くない人間に優しくする必要なんてないよ。一回親切にされたからって、なついたりしないから。
「そうじゃなくて、なんで家の中にいないの?」
サクは触れていた手でギュッと私の頬をつねった全然痛くないけどビックリしてサクの目を見てしまった。