黄昏バラッド
サクは一瞬怒ったように見えたけど、すぐに笑顔に戻った。
「肉まん買ってきたから一緒に食べよう?」
サクはコンビニの袋をカシャカシャと鳴らして、家の鍵を開けた。
なんで?ねえ、なんで?
「ほら、早く家の中に入って……」
サクに引っ張られた腕を私は強く拒絶した。
「バカじゃん。そんなに優しくしたってなんの得もしないよ」
「………」
「べつにまたサクに迷惑かけようとか思ってないし、本当に雨が止むの待ってるだけだよ。だから私のことは放っておいて大丈夫だから」
サクの家の前で座ってた私がなにを言ってるんだろう。こんなことなら雨の中でも、どこかへ行けばよかった。
「なに言ってんの?早く冷めない内に肉まん食べようよ」
サクはもう一度、私の手を優しくひいた。
ーーバカなの?
サクは本当にバカだよ。
でも、こんな言葉で涙がでる私はもっとバカだね。
私の強がりもヘンなプライドも、みんなサクのひと言でどこかに消えちゃった。