黄昏バラッド
私は人気(ひとけ)のない場所を選び、噴水がある広場の前に座りこんだ。
ここにもストリートミュージシャンがいて、私の数メートル離れた先で歌っている。
「じゃ、最後に聞いて下さい。【奏で】」
――♪♪♪♪
ギターの音と一緒に聞こえてきた歌声はすごく綺麗で、それは涙が出るくらい。
なにも持たず、なにもいらないと決めて地元から逃げてきたくせに涙が出る感情だけはまだ残ってる。
それが悔しくて、それが切なくて、それが苦しい。
いっそのこといなくなってしまいたいと思うけど、きっとそれは心から望んでることじゃない。
だってそうじゃなきゃ、こんな知らない街に逃げてきたりしないから。