黄昏バラッド
するとサクはニコリと笑って、自分の隣を指さした。
「ここ。おいで」
なんでもサクに聞かないと分からないなんて、本当に飼われてる猫みたい。私はサクの言うとおり、隣にちょこんと座った。
動くと肩が触れる距離だけど、サクは楽しそうにテレビを見てる。
私はまたチラッと横顔を確認して、聞いてみたかったことを聞いてみた。
「……あの歌はサクが作ったの?」
「んー?あの歌って?」
「昨日公園で歌ってたやつ」
初めて聞いたメロディーだったけど、今も不思議と頭に残ってる。そのぐらい一瞬で心を持っていかれた。
「そうだよ。俺はオリジナルしか歌わないから」
オリジナル?それは自分の作った曲しか歌わないってこと?
「……じゃあ、あれも全部サクが作ったの?」
私は〝あれ〟と言って大量の楽譜を指さした。
「ごめん。サクがいない時に少し見ちゃったの」
指摘される前に正直に話した。
「はは、いいよ別に。うん。あれも全部俺の作った曲」
サクの顔はどこか自信なさげで、私的には作曲なんて誰でもできるわけじゃないし自慢してもいいと思うのに、なんでそんな申し訳なさそうに言うのか理解できなかった。
曲ってどうやって作るか分からないけど、一種の才能がないとムリな気がするし、私には絶対不可能だから、やっぱりすごいことだと思う。