黄昏バラッド
***
そして、また夜がやってきた。
「電気消すよ」
私はまたサクのベッドで寝て、隣には布団が一枚。
もう着ることはないと思っていたスウェットからは、やっぱりサクの匂いがする。
2日目の夜。今日も私はサクのことを何も知らないまま眠りにつく。聞きたいことは山ほどあるけど、サクが何も聞いてこないから。
それに救われているような、少し怖いような複雑な気分。
「ねえ、ノラ」
暗闇の中で声がした。
「……な、なに?」
ベッドからチラッと見ると、サクは私に背を向けていた。その背中は大きくて男の人って感じ。
「明日休みだから買い物でも行こうか。色々必要な物もあるだろうし」
私はサクの背中を見たあと、ぼんやりと天井に目を移した。
必要な物?私お金なんて持ってないよ……なんて、今さら言っても笑われるだけ。
だから一番重要で、一番確認しなきゃいけないことを言っておこう。
「……私、まだここにいてもいいの?」
ずっとじゃない。
そんな厚かましいことは言わないけど、明日とか明後日とかそんな想像できる未来の話。
「ノラがいたいだけいればいいよ」
サクがこっちを見ているのが分かったけど、私は気づかない振りをした。
部屋のカーテンからは外の街灯が見えて、それだけが唯一の明かり。いつの間にかサクの寝息が聞こえてきた。
……疲れてたのかな?サクはなんの仕事をしてるんだろう?
そんなことを思いながら、私も眠りについた。