黄昏バラッド


私はやっと暗闇に目が慣れてきて、ふっとサクの寝顔を見た。なんだか可愛くて、安心して眠る子どもみたい。


サクの寝顔を見てもまだ動揺は消えなくて、心を落ち着かせるように洗面所に向かった。

サクを起こさないように摺り足で、洗面所に付いている小さな明かりを点けた。


……顔でも洗おうかな?汗かいてるし。
あ、でもサクが起きちゃうかも。

そんな葛藤をしていると〝あるもの〟が目に入った。それを見た瞬間、なぜかまた動揺してしまった。


なんで気づかなかったんだろう。

昨日も今朝も洗面所は使ったはずなのに。

洗面所には青い歯ブラシとピンクの歯ブラシが二本置いてあった。


青いのはサク。それじゃ、ピンクのは?

聞くほうがバカだね。

別に不思議なことじゃないけど、だったら初めに言ってくれればよかったのに。

サクがいい人だって知ってるし、困ってる人を放っておけない性格だって分かってる。でも、だからってこんなことをしちゃダメだと思う。

もしするなら、せめて証拠は隠しておいてよ。

じゃないと……見つけた私が罪悪感でいっぱいになるじゃん。
< 35 / 270 >

この作品をシェア

pagetop