黄昏バラッド
私はやっと暗闇に目が慣れてきて、ふっとサクの寝顔を見た。なんだか可愛くて、安心して眠る子どもみたい。
サクの寝顔を見てもまだ動揺は消えなくて、心を落ち着かせるように洗面所に向かった。
サクを起こさないように摺り足で、洗面所に付いている小さな明かりを点けた。
……顔でも洗おうかな?汗かいてるし。
あ、でもサクが起きちゃうかも。
そんな葛藤をしていると〝あるもの〟が目に入った。それを見た瞬間、なぜかまた動揺してしまった。
なんで気づかなかったんだろう。
昨日も今朝も洗面所は使ったはずなのに。
洗面所には青い歯ブラシとピンクの歯ブラシが二本置いてあった。
青いのはサク。それじゃ、ピンクのは?
聞くほうがバカだね。
別に不思議なことじゃないけど、だったら初めに言ってくれればよかったのに。
サクがいい人だって知ってるし、困ってる人を放っておけない性格だって分かってる。でも、だからってこんなことをしちゃダメだと思う。
もしするなら、せめて証拠は隠しておいてよ。
じゃないと……見つけた私が罪悪感でいっぱいになるじゃん。